「六本木少女地獄」解説〜演出編①〜

➡︎a long time A5➡︎版「六本木少女地獄」振り返り企画。

会場/照明/音響編に引き続き今回は3回に分けて各シーンの演出解説や裏話などを大公開!


 0.Opening

幕が上がったり、照明が点くことで舞台が始まるというスタイルが堅苦しくて好きではありません。現実がいつの間にか虚構に侵食されていく方がずっと魅力的だと思っています。

今回はお客様へ挨拶をして、女が少女に本を読み聞かせる。読み聞かせる対象には観客の皆様も含まれています。この流れで観客を徐々に物語に巻き込んで行きます。

その後の「God is God」に合わせたムーブメントは改札を通る→電車に揺られる→神谷町で降りる人々、取り残される少年少女、といった流れです。初演キャストの三輪さんはこのムーブメントをとても気に入ってくれたようです(ちなみに初演ではショスタコーヴィチの「革命」に合わせて電車ごっこをしていました)。


 1. 六本木➡︎邂逅

ぼんやりと東京タワーを見つめる少年の前にとある少女が現れます。恐らく札幌からやって来た彼女はこの六本木の街は死んでいると少年に言い放ちます。

少女役の佳倫さんには「少年を捕食しろ」とオーダーしました。極力目線を離さず少年との間合いを取る。決して逃すな、確実に自分のモノにしろ、と。

六本木の街を語るくだりでは「ダメ男への不満を愛を持って語るように」とオーダーしました。横暴で品がない、スクラップアンドビルドなこの街、ムカつくけど何だか愛さずにはいられない。そんな街で高校生活の4年間を過ごした私の、六本木への愛を佳倫さんに代弁して貰いました。

少年役の中野くんは捕食される側。「隙を見て逃げる方法を模索して」とオーダーしました。稽古中では本当に少年が逃げ切ってしまう回もあったり…笑

二人の若さが愛らしく感じるシーンに仕上がったと思います。


2. 逃亡➡︎少年独白

捕食される前に少女から逃げる少年。走っている内にいつの間にか謎の格闘技のリングに立たされます。

対峙する黒い影。響き渡る女の実況アナウンス。

少年役の中野くんの、この作品に抱いている戸惑いをそのまま独白に乗せて貰いました。そして突如、部屋の明かりが点き…


3.姉弟

テーブルに何者かを匿う少年キリト。気だるげに近づいてくる足音。慌ててラジオ体操を始めるキリト。

「生理。」

女の口から突如響き渡った単語。そのまま女の醜さを語るこの女はどうもキリトの姉のよう。

なぜラジオ体操をしていたのか。姉の質問にキリトは「運動不足だから」と答えます。ゆっくりと近づく姉。動けないキリト。

頬を叩く冷たい音と姉の罵倒。いつまでも家に引きこもり続けるキリトに姉は父親の偉大さを語ります。

姉がキリトの頬を叩く演出は小屋入り初日に生まれました。カッとなった時って蹴ったり投げとばすというような大きなリアクションより、シンプルな一発(や一言)に冷静に怒りを込める気がするので。日に日にビンタが強くなってしまって中野くんには本当に申し訳なく思っています!ごめんよ!

中野くんにはまだ物語が浸透していない観客の戸惑いを共有して欲しかったので、姉に関しての説明も丁寧にやって貰いました。

そして物陰から飛び出す青とピンクの二人組。姉の叫び声が響く中、世界は雨に打たれて…


4.家

雨の中、フラフラとやってきた男。目の前にはなんの変哲もない一軒家。出てきたのは知り合いと思われる母と祖父。男の名前は湯田というらしい。

救世主を歓迎するかのごとく湯田を出迎えた母は何だか焦燥している。湯田と会うのは久しぶりらしい。

祖父役も演じて貰った中野くんには言葉の咀嚼から反応を返すまでがワンテンポ遅れるような身体の状態を作ってもらいました。モデルは私の祖母です。質問して返ってくるまでの間が面白いんです。


5.マリと湯田

湯田は慣れた足取りである一室へ。扉を開けた先にいるのは少女マリ。やはり会うのは久しぶりのよう。

しばらく学校を休んでいるという少女。しかしそんな彼女の表情は生き生きしています。そこにお茶を持って現れる母。母とマリの間には冷たい空気が。

そんな空気を知ってか知らずかお茶をすする湯田。「できちゃったの」と彼の耳に衝撃的な一言。マリはなんと妊娠しているというのです。

「相手は?」と問いただす湯田。しかし父親と思われる男は存在しないよう。それはまるで…

初演時は湯田がお茶を吹き出したり、床を転がったりとコント的な演出でしたが、今回は「想像妊娠」というテーマをダイレクトに伝えたかったのでフィクション感が強い動きは徹底的に排除しました。マリの純粋さが湯田にとって違和感を感じさせ、徐々に二人の間に溝ができていく過程を楽しんで頂ければ。


6.母と湯田➡︎ボケボケの祖父

居間に響く母の噎び泣き。困惑する湯田。マリは恐らく想像妊娠しているのではという結論に。

日に日に大きくなっていくマリの腹に焦る母。マリの父親もずっと帰ってきていないようです。

母役のふせんさんには段々と私情がもつれて会話がヒートアップしていくようオーダーしました。

ママさんたち特有の、噂話と日頃の愚痴が次々と溢れ出てくる感じ。あの言葉たちにはどうしても割り込めない結界のようなものを感じます。

そしてボケボケの祖父。決して悪気がないのが憎たらしくも愛らしい。母からしたら堪ったもんじゃないですけど(笑)

母の神経衰弱状態がピークを迎え、家中に叫びが響き渡り…


7.ヘビの誘惑

姉の叫びが混じり舞台は先ほどの姉弟の部屋に。姉弟の目の前には青い男とピンクの女。いかにも怪しい二人はキリトと姉の実の父親のことを知っていると言います。

父親のことを知りたいと訴えるキリト。苦虫を噛み潰すように目を背ける姉。男は二人の父親が伝説のスポーツ選手だったことを告げます。

「ボクケットミントン」、そんな誰にも知られていない怪しげなスポーツの選手だったという父。まんまと男の口車に乗せられボクケットミントンに魅了される弟。家を出て、父と同じ道を進む決意をするキリトを姉は渋々見送ります。

青い男の名はヘビライ。演じてくれた佐藤岳さんは偶然にも巳年。いつも腹の内が読めない、彼特有の胡散臭さを前面に出して貰いました。後から会話にも出てくるのですが、ジムでは最弱の設定なのでボクケットミントンを教えるくだりでは基本的に仁王立ちでヘビコとキリトに指示しているだけ。実際に動いているのはピンクの女の子ヘビコ役の川島彩香さん。昭和のスポ根少女マンガの主人公らしい、懸命さと爽やかさを出して貰いました。

全然トレーニングしない割に歌唱シーンではノリノリでパフォーマンスするヘビライ。ロクでもないですよね〜。誰もいなくなった部屋は徐々にネオンに包まれていきます。